#1 Masayuki Togashi ”Begining” [ spritual nature収録]1975年
1960年代に日本で起こったフリージャズの動き。その中心人物であった富樫雅彦。リズムを拒絶した激しいドラムで、高柳昌行、佐藤允彦などと日本独自のフリージャズを作り出していた。事故により下半身不随になってしまうが、車椅子の状態で富樫にしか演奏できない新たな境地を生み出す。本曲は、日本人のDNAに刻み込まれたような原風景を立ち上らせる、歌うようなドラム。バックには、渡辺貞夫をはじめ、当時の一流ジャズプレイヤーが、まるで雅楽を奏でるような静謐な音色が響き渡る名作。
#2 Wadazumidouso ”薩慈(SATUJI) ” [Wadazumidousouso ‘hottikku’収録]1961年
尺八は中国から伝わってきた竹を使った木管楽器。雅楽で用いれられたり、禅宗のある一派の普化宗では修行の一つとして用いられられたしてきた。多くの流派があるが、海童道祖は、普化宗を超脱し「海童道」流を創設した。海童道祖が用いる尺八は「法竹」と呼ばれ、「そこら辺にある竹を切ってきて、子供に穴を開けさせたもの」だそうで、普通の尺八に比べ、大きく、野性味にあふれる。確かな技術と、禅に根ざした精神性から、日本の現代音楽の巨匠武満徹(尺八をら使った[ノーベンバーステップ]が有名)だけではなく、海外にも影響を与えている。現代音楽家のジョン・ケージや、ビートニク文学のアレン・ギンズバーグ等である。心穏やかに、法竹の音色に身を任せてください。」
#3 Toshiyuki Tuchitori ”ryuukou ” [joumonko収録]1990年
富樫雅彦らの第一世代に続く1970年代のフリージャズのドラムプレイヤーとして活動を開始。天才阿部薫や若き日の坂本龍一との共演や、ミルフォードグレイブス、デレク・ベイリーなどのインプロヴィゼーション(即興音楽)のレジェンド達の来日公演に関わる。ピーター・ブルックの劇団の音楽担当に抜擢されてから、公演しながら世界各地を民族音楽に触れる。更に日本の縄文時代、弥生時代などの音楽にも注目し、古代の楽器を復活させ演奏も試みている。この曲では、縄文土器に皮を張った太鼓で、プリミティブなリズムを叩きだしている。
#4 Yan Tomita ” music for astro age ” [music for astro age収録] 1992年
日本で初めてのヒップホップ作品(いとうせいこう[Mess/age])の他、アイドル、歌謡曲からアンダーグラウンドバンドな作品まで幅広い作品のプロデューサー。スチールパン奏者でもあり、来日したエキゾミュージックの大家 マーティンデニーのバックでも演奏したこともある。また、「音楽による意識の拡大」を目指した自身のスタジオ(研究所)「オーディオ・サイエンス・ラボラトリー」では、現代音楽、電子音楽、ダブ、ポップ、ヒップホップ、モンド・ミュージックなどミックスした、ヤン富田にしか出せない音を発信し続けている。この曲はスチールパンの演奏に電子音楽を組み合わせた、心地よい風が吹いています。
#5 ” soft wave 2 ” [Soft wave for Automatic Music Box] 1976年
日本の環境音楽の草分け的存在。ホテル、空港、水族館などのBGMなどを作成。また自身の体を使ったパフォーマンなど「音」だけではない活動にも注目される。2003年永眠。この曲は、穴をあけた厚紙=楽譜をトイピアノに読み込ませ、オルゴールのように、自動的にトイピアノが演奏する仕組み。オルゴールの優しく豊かな和音によって、自動演奏とは思えない温かな印象を受けます。
#6 Seigen Ono “aqua”[la movida 収録] 1989年
レコーディングエンジニア、プロデュースなどスタジオでの裏方の顔と、サンプラー等の電子楽器だけではなくチャランゴ、ギターなどの生楽器を演奏するオノ セイゲン。色々なフィールドからメンバーを集めたバンドでは、大人の色気の茶目っ気がある演奏から、コムデギャルソンのファッションショーでデザイナー川久保玲氏から「聞いたことがない音楽」をリクエストされ、80年代中期のニューヨークでバリバリのミュージシャン(アートリンゼイ、マークリーボウなど)を集めたギラギラした演奏まで、音の魔術師のような人です。この曲は、静かな曲が満載の3枚組の超大作。そのラストを飾る20分越えの[aqua]。幽玄なトランペットから始まり、人の声をサンプリングしたもの、電子音、様々な音が混じりあい、海の中で漂い続けるクラゲにでもなったように、ただただ体全体で浸りきれる音楽です。